リビングから回廊づたいに歩いてゆき、突き当たりのドアを開くと、ぱっと視界が開ける。そこが浴室だ。浴槽の向こうには大きな窓があり、正面に甲斐駒ヶ岳、右手には八ヶ岳も見える。洗い場のガラス戸も片側に引き込むことができ、全開すればまるで山中の露天風呂のような趣となる。
「山は季節感豊かですから、いつ見ても飽きないですね。ほぼ毎週、来ていますが1週間で様子ががらっと変わっていて驚かされることもよくあります」というのはオーナーのTさん。もともと山好きで、八ヶ岳周辺に別荘を持ちたいと5、6年探してこの土地に巡り合った。80坪(約270平米)弱の、三角形をした変形敷地だが、雄大な山の眺め、それに目の前に釜無川の支流が流れていて、せせらぎの音が聞こえるのが気に入ったのだとか。
建物は、多摩美術大学の教授でもある建築家の山中玄三郎氏に設計を依頼。以前、北欧を旅したときに見た小さな山荘をイメージして、まるで周囲の風景にとけ込むような自然な風貌の山荘に仕上げ、デンマーク語で「気持ちよい雰囲気」という意味のHygge(ヒュック)と名付けた。
浴室は、ほぼ三角形の建物の一辺を延ばした、その先。おまけのように造られているが、山にも川にも近い、いちばん眺めのよい場所だ。
「風呂を離れにすることで非日常感が生まれましたね」とTさん。すぐ近くに温泉があるので、もしやと思って掘ってみたら敷地内にも温泉がわいた。ナトリウム硫黄泉なので「体のシンから温まります」。温度は15度ほどで沸かさなければ入れないが、ぬるい分、水でうすめなくてすむというメリットもある。実はサウナや露天風呂もつくりかったが、当初は予算のなどの都合で断念。その思いやみがたく、みずから北欧などの文献をあたり、現在、浴室脇に半地下形式のサウナ室を計画中だとか。Hyggeは名前どおりますます気持ちよくなりそうだ。 |
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| 木の扉を開くと、天井までの大きな窓。視界の変化がドラマチックに演出されている |
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