真鶴の急坂の途中、道からは屋上が見えるだけで、全容が見えないシックな中層マンション。ここで週末を過ごす小山起功さん、淳子さん夫妻のベランダからは、「全面が海」の風景が広がる。マンションと海の間に家屋など人工物は一切ない。しかし小山さん夫妻がこのマンションを購入した理由は「手が届くほど近い海だから」ではなかった。
「海と住み家の間に広がる“中景”にこだわりました。この緑の森です。そして湾を隔てた遠方の対岸には、起伏に富んだ山並みが見えます。絵心を誘われます。そんな場所で過ごすのが願いでした」
と、淳子さんは遠方を見やる。
淳子さんは絵画を描く。彼女の水彩画は海を題材にとったものも多いが、茫洋とした青一色の海の絵はない。起伏に富んだ景色に、どこかひとの営みを感じさせる、そんなやさしい絵が多い。
かつて画家・中川一政が好んで題材とした風景が広がる真鶴半島で、広いベランダから、淳子さんは青と緑の景色を眺める。いずれ、ふたりの子どもにも、絵を残したいと考えている。 |
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| リビングのガラス越しに、真鶴の海を見る |
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| 徒歩で磯に出かけ、釣りに熱中する
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起功さんは大学でアメリカ史の教鞭を執る身だが、真鶴に来ると、はじめたばかりの磯釣りに熱中している。
「いやあ、釣りは深いですね。難しい。でも、気負ってやるのではなく、気楽に竿を担いで海にでます。時間はいくらでもありますから。ほら、あそこの磯までは10分、あの堤防まで30分、あそこまでは近道の小径があって……」
と、ベランダから指をさす。
起功さんの時間の表現は、「徒歩」が基準。小山さん夫妻は車を運転しない。だから、駅から歩いて15分というマンションの立地は捨てがたかったという。愛犬を連れて別荘を訪れることもしばしばで、自宅のある東京・町田からタクシーを利用して来るので、タクシーで来られる距離というのもポイントだった。マンションにはさほどのこだわりがなかったが、起功さんがリタイアしたら出かけたいと思っている旅のことを考えると、「管理の面では安心かも」(淳子さん)という。
絵になる海の風景を手にして、真鶴の海辺のライフスタイルは上々のスタートを切ったのだった。 |
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